特集第2弾は、福井県の中心都市、福井市。県都として発展してきた福井市も、最近の都市部衰退が著しくなってきた。懸案だった、JR福井駅の連続立体高架化事業は、順調に工事が進むものの、将来の都市像は、まだ見えてこない。京福電鉄の度重なる事故により、運行停止中の鉄路問題も、福井の都市再生に暗い影を落としている。どうなる、どうする「県都福井」。今回は、都市再生に苦闘する福井の都市問題を見ていきたいと思います。

<福井市関連の各種事業>

1、JR福井駅周辺整備計画
 ・JR北陸線(在来線)京福電鉄連続立体高架化事業
 ・JR福井駅前広場の整備(西口・東口)
2、道路網整備
 ・中央大通り
  福井駅ー大手1丁目間の拡幅(4車線化)
 ・福井駅前地下駐車場整備事業
 ・各高架横断道路の整備
  (連続立体高架化に伴う横断道路の4車線化)

<福井市周辺の今後整備予定事業および構想>

1、北陸新幹線福井現駅乗り入れ
2、中部縦貫自動車道路(福井北-白鳥ルート)整備
3、福井空港整備計画
 ・滑走路拡張
  (滑走路の二千メートル化によるジェット機就航)

県都の証、福井城跡にある福井県庁

 福井市の人口は、25万5,348人(H7.10現在)。面積は340.60km2
福井市は、昭和20年の空襲と昭和23年の大震災により、市内のほとんどが、壊滅的な被害を受けた。この2度にわたる災害から復興したことにより、地元の人たちは、福井市の事をフェニックス(不死鳥)と呼んでいる。市の中心部を南北に走るメインストリートは、復興を記念して、フェニックス道路と名づけられた。福井を支える主なった企業は、準大手ゼネコンの熊谷組や三谷商事・福井鋲螺・100満ボルトなどがある。
 県内唯一の人口2桁都市として、発展を続けてきたが、最近では、人口の伸び悩みや都市部の衰退など、難題が山積してきている。市町村合併による中核市(41万都市)構想もあるが、実現までのハードルは、かなり高そうだ。

 JR福井駅周辺は、富山駅や金沢駅などに比べると、明らかに都市化が出遅れたと言える。いま、その出遅れた分を取り戻そうと、大規模な都市改造が進んでいる
 その目玉事業が、JR北陸線と京福電鉄の福井駅周辺連続立体高架化事業である。高架化工事は、いま、目に見える形で、その姿を現そうとしています
 JR在来線を、東側(裏口)に一旦、仮ホームとして移設し、西側(表口)に在来線の高架ホームを建設。在来線高架ホームが完成後、仮設ホームに北陸新幹線と京福電鉄の高架ホームを建設します。JR小松駅の在来線高架化事業と同じ手法です。
 JR在来線と京福電鉄は一層高架、新幹線駅は京福電鉄のホーム上に建設する二層高架駅となる。JR福井駅を除いた部分の高架化がほぼ完成し、現在ホーム部分の高架化工事に取り掛かっている。(↓仮設ホーム横で工事が進む)
 JR在来線高架化事業は、2005年頃完成予定である。しかし問題なのが、京福電鉄と北陸新幹線の高架化事業。いつ、工事に入れるかが、今後の焦点になるでしょう
 この福井駅周辺高架化事業に、暗い影を落としてるのが、京福電鉄の問題。
 立て続けに起こった、京福電鉄事故により、現在も尚、運転再開の目途がたっていない。電車が走らないレールは、錆が進み、虚しい姿をさらしている。
 (↓手間の複線レールが京福電鉄)。
 京福電鉄は、事業の継続が不可能だとして、中部陸運局に廃線の届けを行った。それ以後、地元による第3セクターによる、存続が模索されたが、なかなかまとまらない状況の中、廃線予定とされる10月を迎えようとしている。
 形上は、県が管理し、運営を地元市町村が中心となった第3セクター会社「えちぜん鉄道」が行うという、上下分離方式で存続されることとなった。また本線・三国芦原線・永平寺線と3本ある鉄路の内、赤字幅が大きい、永平寺線は廃止が決定した。今でも、県と各市町村との間で、激しい駆け引きが続いてる。
 京福電鉄の鉄路に福井鉄道(福井ー武生間)の鉄路も含めて、「えちぜん鉄道」が運営しては、という意見もあるようだ。
 今後、北陸新幹線が開通すれば、JR在来線も、県が中心となる第3セクター会社で、面倒を見なければならず、地元政財界は、頭が痛い日々が続きそうだ。福井市圏の経済都市規模が50万人程度であり、これだけの鉄路を支える事は、かなり難しいのではないだろうか。
 特に、JR北陸線と平行に走る福井鉄道と京福電鉄(えちぜん鉄道)三国芦原線の扱いが、将来問題化することが予想される
JR在来線でも、越美北線の存続問題があるほか、小浜線の電化事業や関西圏の新快速乗り入れに伴う、北陸線(滋賀ー敦賀間)の直流化、若狭リゾート新線(滋賀と小浜を結ぶ新線)など、福井県が抱える鉄路問題が、目白押しだ。県財政が厳しさを増す中、将来に余裕を残したいのが本音ではないだろうか。鉄路は、一度廃止してしまえば、復活させるのは難しい。いかに今の資産を、次の時代へ繋げて行くか、もっと議論が必要のようだ。
JR福井駅連続立体高架化の広報看板
現在、福井駅前では、地下2階構造の地下駐車場が、建設中です。(↓駅西口の中央大通り地下に建設中)駐車スペースは、200台。若干物足りない規模でもあるが、周辺の都市構造を考えれば、あえて地下駐車場を建設せずとも、立体駐車場でも十分ではないかとも思える。
 近年、全国で建設された国が建設する地下駐車場のひとつであり、金沢の武蔵地区で建設された地下駐車場と、同じタイプの物である。
↑福井の連続立体高架化は、JR線が3.3km、京福線が2.7kmが高架化される。富山駅の高架化想定区間(1.6Km)の、約2倍の距離になる。高架化の事業主体は福井県、駅周辺の区画整理事業は、福井市が担当している。
高岡市などの関係者が、福井駅の高架化事業を見ると、更に悔しい思いをするのではないだろうか。完全に高岡駅は取り残されたと言える
↓福井駅前の広報看板
  (新屋舎イメージ)。
⇒駅西口の中央大通りは、駅前から大手1丁目まで、4車線化される。
また駅周辺にあった5ヶ所の踏み切りは、すべて高架下を通る、東西連絡道路に変わる。
 しかし、駅周辺の再開発事業は、その殆んどが公共的なものばかりで、民間の再開発は、マンション程度と寂しい状況である。商業地域は、シャッターを降ろしたままの店舗が多く、追い討ちをかけるように、ファッションビルのアピタ生活倉庫が、今年春に閉店。駅周辺の大型商業施設は、だるまや西武と西武LOFTだけになってしまった。
 在来線の高架化下スペースを、金沢駅の百番街のような商業スペースにする予定であるが、はたしてテナントがどれだけ集まるか、疑問が多い。福井は、金沢ほどの観光地では無い為、観光客を当てには出来ない。また、生活圏としての乗降客がさほど見込めない為、高架下の商業スペースは、かなり中途半端なものになる事が予想される。中途半端な商業施設は、いずれ衰退する。富山駅前や高岡の各種再開発を見れば、想像できるのではないだろうか。問題なのは、行政が明確な福井駅前の将来ビジョンを、持っていないことである。
福井駅東口(裏口)。
画面奥の中心部には、高層ビルが無い為、都市という感じが受けられない。
この東口が、新幹線とえちぜん鉄道の正面口となる。駅舎工事は、まだまだ先の話しとなりそうだ。
東口から望む駅前大通り。
こちらの都市再開発は、まだ具体化してない。
コンサートホール機能を備えた公共性の高いビルが想定されているが、既存ホールとの棲み分けなどは、これからの課題となる。
⇒トランジットモール化を目指す駅前電車通り
 福井は、路面電車のある街です。この路面電車、環境にやさしく、将来のコミュニティ交通機関として。全国的に見直されている。欧州では、LRT(ライトレールトレイン)が有名であり、車社会との共存を目指した取り組みで、市民の生活に定着しつつある。
 そして、LRTと都心部を最大限に活かしたものに、トランジットモールがある。これは、車を郊外に駐車し、都心部までの交通機関としてLRTを使用。都心部の目貫通りは、一切車の乗り入れを遮断し、LRTとバスのみが乗り入れできる歩行者天国にするもの。通りには、欧州らしいオープンカフェや屋台などが建ち並び、商店街は明るく、広々とした空間となり、買い物客を都心部に呼び戻すことに成功している。現在のところ、このトランジットモールは、日本には存在しない。
 福井では、駅前電車通りを、トランジットモール化しようと検討されている。駅前電車通りは、福井最大の商業地であり、県内唯一の百貨店「だるまや西武」(←上)や北陸唯一の「西武LOFT」(←下)などがある。
 駅前電車通りは、トランジットモール化に、かなり適してる通りと言える。その理由は、1、幹線通りでは無いこと、2、通りに平行して一本裏に幹線通りがあること、3、商業施設が集積してること、などが挙げられる。しかし、実現までには課題が多そうだ。
昨年10月に2週間に渡って行われたトランジットモール社会実験(福井県主催)では、ある程度、利用者には好評であったものの、モール内の商業店舗からは、路上駐車客が減ったなど、不満や不安を声にする方々が多いようだ。同じトランジットモール化を検討している、高岡市の末広通りでも、同様な意見が地元商業者から聞かれるようであり、これらのコンセンサスを取るのが、課題となっている
 また福井駅前の課題は、魅力ある商業施設が少ない点。駅の高架化に合わせて、再開発事業が控えているものの、メインとなる核店舗などの確保は苦戦が予想される。全国初のトランジットモール化は、少なからず大手流通資本が、興味を持つと思われる。アピタ生活倉庫は撤退したが、跡地の再開発計画を早期に立ち上げ、福井第2の百貨店誘致を目指す必要があると考える。例えば、福井震災後に撤退した「大和」(金沢)や関西・名古屋系の百貨店誘致も検討すべきでしょう。ふたつの百貨店と、それを結ぶようにトランジットモールを整備する”2核1モール”型の都市づくりであれば、都市再生の可能性が出てくるものと思われる。もちろん、地元商店街が大きく変わる必要はあるが。
 この都心部復興に、多大な影響を与えているのが、郊外店の台頭である。特に福井市北部の国道8号線沿いは、大小の郊外店が犇めいている。
 一昨年にオープンしたフェアモールアピタは、営業面積が約五万六千平米(物販面積が三万三千平米)、アピタと126の専門店が入居している。
 この地域は、単なる郊外店ゾーンではなく、副都心の様相も見せ始めている。今年に入り、アピタに隣接する形で、←福井新聞本社ビルと福井放送本社ビルが立て続けに移転してきた。
 福井北インターにも近く、都心部へのアクセスも、まずまず良いことから。今後もビジネス系のオフィスが移転してくる可能性を秘めている。更に、マンションなどの立地もみられるようであり、定住生活圏としても、今後伸びる要素を含んでいる。
 この地域の問題点は、計画的な都市整備では無い為、将来像が見えない点が挙げられよう。
 福井の南部地域にも、副都心化が進んでいる地区がある。福井市花堂地区であるが、22年前に、←北陸最大級の商業施設「ベル」(平和堂がキーテナント)がオープンしたのをきっかけに、ビジネスビルが多数立地している。近くに福井鉄道が走り、丹南(鯖江・武生)へのアクセスも良いことから都市化が進んだと言える。
 ベルの店舗面積は約三万七千平米。平和堂のほかに専門店が83店舗入居している。
 また↓ハーモニーホールなど公共施設も、隣接エリアに整備されている。ホールの側には、福井鉄道の駅もあるなど、利用者の利便性が非常に高く、好感が持てる。
 このように、福井市の南北で副都心化が進めば、ますます福井駅周辺の地盤沈下は避けられない。また、都市間競争が激しくなる中、「京金族」と呼ばれるように、福井の若者層では、京都や金沢へ遊びに行く人が増えている。それだけ福井の商圏に魅力を感じない人が多くなってきており、行政の明確な都市ビジョン策定が急がれるところである。せめて、在来線の高架化が完成する2005年ごろまでには、トランジットモールの実現を行いたいものだ。
 北陸新幹線が開業すれば、更に都市間競争が激化するでしょう。福井の中心商業地にとっては、まさに今が正念場と言える。しかし、その取り組みは、富山や高岡などと同様、とても遅いようだ。「危機感」という言葉は出ても、危機感が行動に伴ってこないのが実情である。まるで、今の日本社会を縮図にしたように見える。
 現代の都市間競争は、結局のところ。行動したところが勝ち残るのではないだろうか。良いと思ったら、実行する。そんな指導力・指導者が必要かもしれない。例えば都市プロジューサーの導入や、商業地域自体の株式会社化などを検討しても良いのではないだろうか。特に、独自の成長が出来るのは、政令指定都市(人口70万以上)だけと言われている。福井をはじめ富山・高岡などの中規模都市では、大手資本を当てにすることが出来ないため、行政の役割が非常に大きいと言える。
 謙虚に外から見て魅力に映る、そんな都市への脱皮は、一筋縄では行かない。限られた時間で、どれだけ努力できるか、福井の苦闘は、今始まったばかりである。
200210.1作成