今月からはじめる特集コーナーでは、ひとつの都市を徹底的に分析。良い点・悪い点を洗い出して、富山の都市と比較します。
富山県が抱える多くの都市問題。その解決への糸口を探していきたいと考えています。

 その記念すべき第1回特集は、小松市。
いま小松市は、大型の公共事業や都市再開発事業が大詰めを迎えています。

<整備が進む小松市の各種事業>

1、JR小松駅周辺整備計画
 ・JR北陸線(在来線)連続立体高架化事業
 ・JR小松駅前広場の整備(西口・東口)
 ・小松駅周辺文化施設整備(コンサートホール)
2、道路網整備
 ・国道8号線バイパス工事(地域高規格道路)
 ・加賀産業道路金沢小松線(4車線化・立体交差化)
 ・空港道路(小松空港ー加賀産業道路間の拡幅4車線化)
 ・金沢美川小松線(新規4車線化)
 ・小松根上線(小松駅西口前周辺の4車線化)
 ・各高架横断市道の整備
  (JR北陸線連続立体高架化に伴う横断市道の4車線化)
3、小松空港整備計画
 ・滑走路嵩上げ
  (滑走路の強度格付け最高ランク、LA-1への格上げ)
 ・国際貨物空港(FAZ)としての、倉庫群整備
4、小松ドームの整備

<小松市の今後整備予定事業および構想(大型案件)>

1、北陸新幹線小松現駅乗り入れ
2、中部縦貫自動車道路(小松-白川ルート)整備
3、-構想-小松空港の国際ハブ空港化
  (北陸国際空港への格上げ)
4、-構想-新交通システムの検討

 小松市の人口は、10万9,531人(H14.7現在)。面積は371.13km2
現在も、小松市の人口は伸びています。小松の主力産業としては、小松製作所や小松精練をはじめ、間仕切りメーカーのコマニ−や小松ウォールなど、小松生まれの工業系企業が多数立地している。このほか、航空自衛隊といった、人口転入基盤を持っています。
 また、小松市にとって明るいニュースがある。日野自動車の工場が、横浜から小松へ移転することが決まり、横浜工場で働いていた従業員の内、200人強が小松市へ転入することとなった。家族などの転入など、500人程度の人口増が見込め、小松市の人口が、一気に11万人代へ突入することとなる。

 JR小松駅の連続立体高架化は、今年秋の開業を目指し急ピッチで工事が進んでいる。総工費360億円。
金沢駅の高架化に比べると見劣りはするものの、県第2都市として、十分な駅舎が姿を現しつつある。
 北信越の県庁所在地以外の都市としては、初の在来線立体高架化。全国的に見ても、人口10万人ほどの都市で、在来線高架化を行ったのは、めづらしいケースだ。
 小松駅の在来線高架化が実現した大きな要因は、やはり政治力と言えるだろう。小松市のお隣り、根上出身の有力代議士が居たからこそではあるが、石川県としても、金沢一辺倒の政策では無い事を、示したとも言える。
 旧小松駅前は、広場が狭く、バスターミナルもビルの陰にあるなど、窮屈な感じがありました。しかし、整備される新小松駅前広場は、コマビル跡地を活用し、以前の倍以上の空間を確保した。広さから言えば、ほぼ高岡駅前ほどになる。
 JR小松駅の高架化は、一旦仮設の線路とホームを、東側に移転して、これまでホームがあった場所を高架化するといった手の込んだ手法を取っている。そして、新幹線ホームは、仮設ホームのある場所に建設される事となっている。
 これは、あくまで小松駅の主な利用者を、新幹線乗降客ではなく、在来線乗降客をメインとして考えられた駅舎と言えるだろう。
 JR小松駅の連続立体高架化が実現した、もうひとつの要因は、北陸線以外の支線が無く、ホームも3面と少なく済んだ点がある。また、貨物ヤードの機能が、もともと無かった点も、有利に働いたと言える。連続立体高架化の全長は、約3.6キロ、ほぼ金沢駅の高架化と同規模である。金沢駅の在来線高架化事業が、500億円程掛かったの対して、小松駅の高架化が、かなり安くあがったのは、駅舎規模が小さかったからと言えるでしょう。
 17万都市「高岡」が30年来、熱望していた新幹線現駅乗り入れと在来線連続立体高架化が、果かなくも夢敗れたのに対して、10万都市「小松」が、あっさり実現してしまったこの事実。現状、高岡駅周辺の整備計画も、ほとんど進んでおらず、将来整備されたとしても、これまでの高岡における各種再開発計画と同じように、お茶を濁す程度の整備に終わるのではないかと思われる。
 遠くない将来、都市機能をはじめ、北陸における地位で、小松が高岡を上回ることは必死の情勢になってきた。
JR小松駅前の小松根上線
 JR小松駅整備に合わせて、西側(商店街側)の都市整備も進んでいる。駅前を南北に走る、小松根上線の4車線化工事が、一部開通したほか、JR北陸線高架下を潜る、東西の幹線道路が、4路線(全て4車線道路)も開通する見込みである。
 高岡駅周辺では、JRをまたぐ南北の幹線道路が1本しかない状況とは大きな差を付けられた格好である。
 小松駅周辺の商業地区再開発は、全てこれからということになるが、こちらはかなりの苦戦が予想される。
 西武百貨店の撤退後に入居した、小松大和。コマビルが取り壊されて、駅前広場になったことにより、新小松駅前のシンボル的な商業施設となりそうだ。
 しかし、郊外店や金沢商圏に押され、現実は、かなり厳しい状況が続いている。8階などでは、全フロアがゲームセンターとかしている。
 駅前のにぎわい創出の為に、小松市も文化施設の建設が進んでいる。最近、はやりの駅前コンサートホールが、メインとなっている。富山市の駅北オーバードホールを皮切りに、金沢駅前の石川県音楽堂など、交通の便を活かした公共施設は、確かに便利であり、市民にも好評である。しかし、現実は採算性が合わなかったり、民間の商業施設立地が進まない為の代替施設的な要素が多いのも現実である。
 果たして小松駅前の文化施設が、どれほどの利用者がいて、駅前のにぎわい創出に役立つか、オープン後の動向が気になるところである。また、既存の小松文化ホールの利用状況を見ても、とても良いとは言えず、小松市に2つものホール機能が必要だとも思えない。今後は、小松文化ホールの扱いを含めた、棲み分けが課題として残るだろう。そして、小松市にとっては、金沢市との棲み分け意識や差別化も、重要となるのは間違いない。
 小松駅前の商業地域は、かなり衰退している。というより、死んでいると言ってもよいだろう。
 小松大和前から始まる、アーケード通りは、全長500メートルにも及び、富山の総曲輪・中央通り並である。しかし、人通りは少なく、シャッターが閉まったままのお店や、商売自体をやめられた建物など、商店街の約半分は商業施設ではない。
 この状況が、劇的に変化するとは、とても思えない。暗く、人通りが無いアーケードが、空しい姿を見せている。それにしても気になるのが、百貨店とアーケード通りが、有機的に繋がっておらず、人の流れが生まれにくい状況にある事。
 高岡のオタヤ通りと高岡大和にも、同じ事が言える。百貨店の中に、お客がいても、外のアーケード通りとは、別空間になっているのです。もっと、百貨店から、人が溢れ出すような構造を作る必要があるのではないでしょうか。
 百貨店1階部分は、路面店舗化を図り、外との出入りが、容易に出来るようにし、2階部分も、側面をもっとシースルー化することで、空間的な一体感を作りあげる必要がある。
 アーケード通りとは別に、駅前の真ん前に、新しい商業空間が誕生している。建物が全てレンガ造りの通り、名前もそのままの「レンガ通り」である。6棟ほどしかないレンガ通りではあるが、駅を出ると真正面に見える好立地。しかし、こちらの方も、道路拡幅を含めて、これからといった感じを受けた。
⇒また、これまでの小松駅には無かった、駅裏口(東口)も設置されることとなり、東口広場も整備工事が進んでいる。こちらは、広場の大きさが高岡駅南口広場よりも広めのようだ。
 今後、新幹線駅舎も完成すれば、ライバルの高岡駅は、とても恥ずかしい状態になるだろう。
 小松駅東口周辺には、県の合同庁舎が建設中(⇒)であり、以前から立地していた小松製作所の工場とともに、ビジネスマンが、小松駅周辺活性化の起爆剤となるかもしれない。
 しかし課題なのが、若者による街の活気が期待できない点。駅周辺には、大学や高校の立地が無く、平日の賑わいが無い。この若者対策は、今後もあまり期待できず、駅前商店街の悩みの種になるだろう。
 特に、小松には4年制大学が無く、小松短期大学のみと寂しい状況である。少子化が進めば、更に若者人口が金沢へ流出することが予想される。
 この若者人口流出は、富山市・高岡市ともに、同じようなことが言える。高等教育機関整備や私学育成に、力を入れてこなかった行政の付けが、影響していると言わざるを得ない。これからの企業育成にも、高等教育機関の役割が、重要な役割を担っていることから、小松市の動向が気になるところである。小松駅東口地区に、4年制の大学が立地すれば、駅周辺は大きく活気つく事が予想される。
⇒多くの旅客機が駐留している小松空港のエプロン。
 日本海側で最大の空港「小松空港」。自衛隊と民間の供用空港は、2700メートルの滑走路が1本、国(航空自衛隊)が管轄する特殊空港である。
 小松空港は、国内路線として、札幌(日1便)・仙台(日1便)・羽田(日11便)・福岡(日3便)・鹿児島(日1便)・那覇(日1便)、国際路線として、ソウル(週3便)が就航している。
 小松市にとっては、空港を抱えているのが、大変な強みでもある。
 今後も滑走路の嵩上げ整備が予定されており、完成するば、航続飛行可能距離は約8,00キロと飛躍的に伸びる。小松からロンドンやシドニー・ロサンゼルス・ラスベガスまで、補給なしで飛行が出来るようになる。既に欧州では、ルクセンブルクと小松を結ぶ貨物路線(カーゴルクッス航空)が就航しており、実績もあげている。
 一方。富山空港は、富山県が管理する第三種空港。滑走路が2,000メートルしかなく、航続飛行可能距離が約4,000キロしかない。更に、河川敷空港の為、オーバーランや誘導路も整備できない。また内陸空港の為、発着枠が制限されており、航空需要があるにもかかわらず、増便できないという地方空港としては、極めてまれな空港と言える。
 今後、富山空港にとっては、移転でもしない限り、小松空港には太刀打ちできなくなるだろう。
 石川県では、ドラゴン航空の香港便就航や島根県の出雲空港と協調して、上海便の就航を目論んでいる。
 しかし、ここで問題になっているのが、航空自衛隊の存在。あくまで小松空港は、自衛隊管轄の空港であり、海外旅客機の定期便乗り入れを、頑なに拒んできている。ましてや、共産圏の中国機就航は、かなりの抵抗がある為、実現へのハードルは高い。しかし、同じ自衛隊管理の千歳空港のような民間専用の第2滑走路整備や、航空自衛隊の能登移転などの噂もあり、実現すれば小松空港が名実ともに、北陸国際空港になる可能性もある。
 ライバルの富山空港も、将来構想をもっともっとしっかりしたものにする必要があるだろう。特に、空港移転は是非検討してもらいたいものだ。
⇒空港-小松駅-加賀産業道路を結ぶ空港道路の4車線拡幅工事が進む。
 JR小松駅の高架化に伴い空港と市街地を結ぶ幹線道路の整備も大詰めを迎えている。
 今後は、北陸新幹線の小松空港乗り入れを軸に、空港とJR小松駅を結ぶ、新交通システム導入が大きく議論されていく事が予想される。
 ここでも、有力代議士の動向が気になるところとなってきた。
 小松市にとって、象徴的な施設「小松ドーム」が、2年前にオープンした。この小松ドーム、日本海側最大の膜屋根式、しかも開閉ドームである。ところが、大きさが、かなり中途半端。フィールドが狭い為、野球・サッカーとも、プロの公式戦が行えない。スポーツ的には、ソフトボールやミニサッカー・バトミントン・テニスなど、デッカイ体育館的な使い方しか出来ないようだ。傍目から見ると、あまり魅力的とは思えないのだが…。折角、多額の資金を投じるのであれば、もう少しなんとかならなかったのだろうか。
 また、建設場所も、粟津温泉の近く、それも田んぼのど真ん中である。車でしか行けないという、兎に角、辺鄙な場所だ。富山県も県陸上競技場・富山市アルペンスタジアムをはじめ、テクノホール・テクノドーム・テクノアリーナ、いずれも車でしか行けないところばかりである。富山県には、沢山の鉄道路線があるにも関わらず、その資産を有効に活用してこなかった。これで、鉄道利用者が減ってきてる事を、嘆いているのだから県民はたまらない。一度、造った物は、簡単には移動できないのだから、もっと行政は、しっかりとしたビジョンで、公共施設を考えてもらいたいものだ。
⇔建設中の国道8号線バイパス。連続立体高架化と盛り土高架の併用タイプのようです。粟津地区で、8号線バイパスは、加賀産業道路と合流する
 写真のように、国道8号線バイパスの工事が、ほぼ完成に近づいてます。この整備の規模的なことを言えば、金沢ー津幡ー宇ノ気間で整備が進む、国道157号線バイパスと同じ仕様と言える。4車線の自動車専用道路に、片側1車線の側道がある。高岡で建設中の環状線(佐野ー南郷大橋間)も同様の仕様だ。ちなみに、金沢で建設が進む、外環状道路(海側)は、4車線の自動車道路が全線で連続立体高架化、側道は片側2車線化で、北陸道+国道8号線の金沢東IC−金沢西IC間と、同じ仕様となっている。
 小松の現8号線は、駅東側を南北に走っていますが、この現8号線も4車線化されており、高岡の国道8号線整備に比べると、かなり先を行っていると言えるだろう。更に、小松と金沢を結ぶ幹線道路として、金沢美川小松線が4車線で建設されている。
 小松の課題としては、市町村合併が議論されていない点がある。この事は、当面のライバルとなる高岡にとっては、ラッキーとも言える。小松市もその気さえあれば、隣接する根上町・寺井町・辰口町・川北町と合併すれば、人口16万人規模になることも可能ではある。そうなると、本当に高岡のお尻に火が点くこととなるのだが。
 また問題なのが、都市基盤は充実してきたのだが、街事態に活気を、全く感じない点。街からひと気を感じないのだ。またひと気だけでなく、駅前には車の乗り入れも少なく、街自体が暗く見えるのが気になる。特に、都市型ホテルなどが、駅周辺には無い為、夜の賑わいも少ないのが現実だ。
 しかし、全般的なことを言えば、全国の同規模都市をはじめ、中核市クラスからみても、羨ましくなるような都市規模を備えてきたのは評価できるのではないだろうか。今後、注目するのは、小松空港の整備拡充と中部縦貫自動車道の整備が、どこまでやれるのかという点である。
 これまで、石川県の小松市だったのが、全国区の小松市へと、一歩前進しはじめたのは、確かなようだ。
今月から始まった特集コーナーは、いかがでしたでしょうか。今後も、精力的に街特集を組んでいきたいと思いますので、お楽しみ。
2002.9.1作成
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