<『ローカル大学からの脱却』〜国立富山大学の名称変更〜>
国立富山大学は、もともと旧2期校のため、大学ランクでどうしても低く見られてしまう傾向にある。また、大学名でも富山を名乗る事で、ローカル都市の大学というイメージが付いている。このような、ローカル大学から、富山大学は変革をしていかないと、全国的に生き残れないだろう。東北大学、九州大学のように、都市名からエリアを総称する大学名になれば、広域から学生を集めやすくなり、外国からの留学生の誘学も期待できるだろう。
大学改革で、1大学法人のもとに複数の大学をぶら下げるアンブレラ制度が認められるようになったのを、富山大学でも取り入れたい。独立大学法人の富山大学は名称を残しつつ、現在の富山大学を2つの大学に分ける。ひとつは、富山市内にキャンパスを構える大学として『日本海大学」を設立する。大学名に、日本海を使う事で日本全国を対象にした大学イメージを持たせる。学部数は、新たに設ける学部も含めて10学部の総合大学とする。また、高岡市内にキャンパスを構える大学として『北陸芸術文化大学』を設立する。こちらは、北陸を冠につける事で、三大都市圏からの学生確保を狙う。学部数は、新設も含めて、5学部の総合大学を目指す。これらの取り組みで、金沢大学や新潟大学との差別化と、ランク逆転を狙いたい。
<行政による大学育成と支援『大学強化専門チーム』の新設>
厳しい状況の大学経営をサポートするのは、行政の役割となる。その為には、県庁内に『大学強化専門チーム』を新設する必要がある。行政の財政も厳しいが、工業団地の造成や誘致企業の補助金制度のような産業育成を、大学育成にも適用していく必要がある。大学誘致にはこれまでも、大学設置に必要な用地を無償提供や補助金制度があるものの、大学育成に掛かるアフターケアが不足している。大学の増学部などに必要な新規用地や教職員確保、更に学部増設の許認可で行政職員の派遣など人的サポートをする。ハード面だけではなくソフト面でのケアが必要であろう。
<積極的な『公立大学』の実現>
全国では、運営が厳しくなった私立大学を公立(市立)大学とするケースが増えてきている。私立より公立の方が、学費を抑えられることで、学生集めを行いやすいというメリットがあり、地域経済を維持するという観点からも、地元自治体が積極的に地元の私立大学に参画し始めている。北信越では、私立から公立に移行した大学には、諏訪東京理科大学、長野大学、長岡造形大学、小松大学などが挙げられる。定員割れが続いた事で閉学となった高岡法科大学などは、なぜ行政による公立化ができなかったのかと残念でならない。
強い私学がある県は、若者から見ても魅力であり、私立大学が多い大都市にどうしても若者が流失してしまう。まして富山県では、いまだに公立志向が根強い土地柄だ。ところが、国立富山大学では、在校生の60%以上が県外からの学生で占められ、県内の学生はわずか40%も満たないの状況だ。もちろん、県外からの学生が、そのまま富山県の企業に就職してもらえれば良いのだが、現実はほとんどの学生が、東京の企業や出身県の企業に就職して、富山県に残らない。これが致命的な問題として横たわっている。
如何にして、富山県に大学を増やすのか。理想は私立大学だが、ここは行政による複数の『公立大学』を実現していくしかないだろう。富山市・高岡市・射水市が、それぞれ大学を作る。ただ、単に市立大学とするのではなく、それぞれの地元にある私立高校と共同で設立する公設民営型の『公立大学』で実現することで、地元の若者が県外に流出することを抑制させたい。また、開学時にいきなり複数学部を有する総合大学として開学させることも重要だ。『大規模大学』でなければ、若者が魅力と感じないからだ。石川県の小松大学は、3学部を同時に開学させている。富山県でも参考にするべきだと考える。富山県は総合大学を多数つくることに拘り、学部数も40程度にできれば、富山県内の学生が学びたいと思う学部がほぼ確保できるはずだ。そうすれば、県外に出て行かなくとも、県内で高等教育を受けることが可能となる。この意義はきわめて大きいだろう。
私立大学の育成には、『上下分離』の方式も考えられる。土地・施設は行政が行う、運営を私学に委託するやり方だ。長野県の諏訪東京文理大学は、もともと諏訪地域6市町村による『公設民営』の短期大学として、東京理科大学との提携して開学した。その後、4年制大学移行を経て2018年に公立大学化されたが、東京理科大学との『公設民営』例と言えるだろう。富山県で、私立大学育成の参考とできるはずだ。
【大学育成の目標】
1、総合7大学40学部の実現を目指す
2、県内の大学進学率を、現在の50%前半から欧米並みの80%台へ引き上げる
3、県内大学への進学率を、現在の10%後半から金沢並みの50%台へ引き上げる
4、県内の大学生数を、現在の1万4千人から金沢並みの3万5千人レベルに引き上げる
【行政による大学育成の具体案】
1、学生補助金制度〜県内の高校卒業生で、県内の大学に進学する学生に対して、月額1万円の無償奨学金を行なう
2、町なか居住の斡旋〜県外から県内の大学へ進学した学生を対象に、町なかの空家を低額で提供する制度の創設、県内の大学に進学した学生を持つ県内の世帯には、住民税の軽減処置を行なう
3、私立公立を問わず、各大学をサポートする指定校(小学校・中学校・高校)を複数校設け、大学教育をフィードバックさせる
4、大学発のキャンパス・カンパニーやガレージ・カンパニーを支援する公的なベンチャーキャピタル制度を設ける
5、公的な諮問委員会など専門の学者を必要とする場合は、必ず県内大学の学者に限定する規制を設ける
6、運営の厳しくなった私立大学を、一時的に公立(市立)大学として再建を図る
<廃校となる高校を活用した新設大学の実現>
小学校・中学校・高等学校の統廃合が、今後進むと考えられる。特に、都市部では多くの校舎跡地が出てくる見込みだ。この小中高の再編に伴う、校舎跡地や教員を、新設大学などに転用することを検討してもらいたい。
例えば、高岡地区で高校の再編を検討する際には、高校が集中している高岡高校・工芸高校・志貴野高校跡地を、新設大学用として転用を図るのである。隣接地の使われていない公用地も活用した「医療系総合大学」の実現を目指してもらいたい。市民病院を付属病院とした医学部や看護衛生学部などを有する、公立大学も検討したいものだ。都心部に近い大学を確保することで、街の活性化へ繋げるとともに、若者からも魅力的に見えるキャンパスライフを提供する。
富山地区でも、都心部で効率的なキャンパス再編を実現させ、大学が設置できるレベルのキャンパス用地の確保を目指す必要がある。都心部に大学を張り付けられれば、社会人入学や生涯学習機関としての活用も想定できるだろう。